コワモテのおじさん
朝、よく同じ電車になるコワモテのおじさん。
濃い目のサングラスにオールバックと、小脇に抱えたセカンドバッグがトレードマーク。
他の乗客とよく喧嘩をしている。
たまに駅員さんになだめられている。
満員なのに、押してきた他の客を怒鳴り散らしている。
「押してきて謝らないとは何事だ!」と喚いている。
自分が如何に正しいかを訴え、大きな声で喧伝している。
優先席が空いて、座っていたが大股開きだった。
両隣の人はとても狭そうにしていた。
どんな人にでもいいところはある。
大声を出すのは怖がりの証拠。
そんな風に言われても、こんな人だから近づきたくないなぁと思っていた。
今日は、あえて隣の車両に乗ってみた。
コワモテのおじさんがこない車両だと思っていたから。
そしたら、なんとそのおじさんがいた。
そして、優先席近くを陣取っていた。
今日もまた大きな声を出していたけど、言っていることはいつもと違う。
「だから、オレは腕が上がらないからつり革につかめないんだよ!わざとじゃねぇ!」
普段、あまりにコワモテで、怒鳴り散らしているので、体が悪いのには気づかなかった。
そんなこんなしていたら、お姉さんが、コワモテのおじさんに席を譲っていた。
コワモテのおじさんは何かカードのようなものを見せていた。
たぶん、体の悪いことを証明するようなものなんじゃないかなって思った。
それを見たら。
何でコワモテのおじさんは、あんなにもコワモテにして、威嚇して、自分の正しさを喧伝しているのか、その理由がわかったような気がした。
不安で、怖くて、そういう方法しか知らないんだと思う。
だから、コワモテのおじさんがいい人かっていうとそれはまた別の話であるけれど。
もしかしたら、大声出している時に無視をしないで、「どうかしましたか?」って一言かけるだけで、また違うストーリーが始まるのかもしれないと感じた。
そんな風にして、人を信じてみるのも悪くないかもなって思った。
これは365個目の仮説・叩き台です。
- PREV
- その手では未来は変えられない
- NEXT
- 溺れる人に泳ぎを教える